萬年山 東陽寺

お知らせブログ

住職のひとり言

死と向き合って

大腸癌ステージ4を宣告され、平成31年3月に腹腔鏡手術を受けました・・結果は成功。一度は死んだと思った命を先生方の力によって助けて頂きました。肺に転移した癌に対しては抗癌剤を続けてみましたが、後遺症が出てしまったので中止。その後は特に何も治療せず、経過観察を半年毎に行っていきました。一時は先生より肺癌の手術を提案されましたが、手術の成功確率は50%。「ありがたいことに今は癌の兆候なく、元気に過ごせている。私としては何もせず自然に任せて、今の生活を大切にしたい。」と伝えたところ、先生は私の意志を尊重して下さいました。

大腸癌ステージ4の5年生存率は20%以下と言われています。死期は近い。僧侶という立場上、死について人に説くこともあった。今、それを自分自身に言い聞かす・・「終わりがあるからこそ、今一瞬一瞬を大切に生きよ」。今日すべきことは?やり残しは?充実した1日を過ごせたか?自問自答の日々が続きました。不幸中の幸い、手術後の2年間は非常に体調が良く、体重も元に戻り、お寺の仕事・作務も2時間やっても疲れず、少量だがお酒も飲める日々を過ごせました。生きる喜びを感じ、感謝の日々です。

しかし、今年の3月過ぎた頃から状況が変わってきました。背中と肺癌のある部分が痛い。昼間は鎮痛剤を塗りなんとか我慢が出来ますが、夜になると痛さで目が覚めてしまう。「もぅそろそろいぃかな・・。息子への引継ぎは出来たし、やれることは全てやったはず」。かなり満足している、肺癌に対して手術などをしなかったことに後悔はない。人生の残り時間を考える機会が多くなってきましたが、法要をしたり・パソコンをいじったり・自分の好きなことをやっている時はそんな悩みも忘れて集中し痛みを感じないことがあります。癌の痛みも人間の精神・心に大きく影響をうけるのだとつくづく感じました。癌を完治することは難しそうですが、これからはこの痛みとどう向き合っていくのかが課題だと思いました。

そんな時、ウクライナ戦争で負傷した兵士の映像を見ました。病院に運ばれる彼の一言は「早く仲間のもとに戻りたい・・」。死の極限にいる彼は自身を顧みず、ただ祖国の為・仲間の為に早く次の行動を求めていました。我ながら残念だが、僧としてまだその境地に辿り着いていません。「痛いのは嫌だ。今度お医者さんにみてもう時、痛み止めを多めにもらおうかな」。そんなことを思い悩みながら、日々を過ごしています。