萬年山 東陽寺

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住職のひとり言

忘れない出来事

私の記憶で、一生忘れられない出来事が二つあります。

 

1つが平成13年9月11日・アメリカ同時多発テロです。当時は朝の作務を終え、新聞を読みながらテレビをつけていました。すると、マンハッタンのワールドトレードセンターが映し出され、アメリカン航空がゆっくりと高度を下げ近づいていく映像が目に飛び込んできました。一瞬何が起こったか理解が追いつきませんでした。アナウンサーの切羽詰まった声と共に、テロ組織によりハイジャックされたアメリカン航空機がビルに激突するシーンが何度も映し出されました。イスラム過激派テロ組織アルカイダによる、日本人24名を含む約三千名の死亡者が出たテロ事件です。

 

もう1つが平成23年3月11日・東日本大震災の津波による福島原発事故です。当時は、お寺が客殿建立・本堂瓦葺き替え及び耐震補強を終えてホッとしたばかりの頃でした。足立区は震度5強で、私は地震直後慌てて火を消し、外に飛び出しました。その時の光景は今でもはっきりと思い出せます。本堂が軋み、帆掛け船が大海で台風に襲われた光景と同じようでした。地震の振動に合わせ瓦・屋根が数十センチも揺れながら、ゆっくりと「ギィー・ギィー」と不気味な音を出し、「もう潰れる…。」と心臓が止まりそうになりました。

しかしその後、私は更なる悲劇を知ることになります。福島の原子力発電所が津波により被害を受けたという情報です。冷却装置が壊れ、メルトダウンが起こり…大爆発を起こす一歩手前という状況が伝わってきました。本当に大爆発が起こってしまったら、東北・日本は立ち直れない…そんな思いが浮かんでしまいました。更にその後、メルトダウンを防ぐために冷却用の海水を注入するか・しないかで争う現場所長と政府…そんなやりとりをしている放映を、かたづを飲み込み見守っていたことを覚えています。

 

この2つの出来事から、再度考えることは日本のエネルギー開発問題です。政府は2030年・温室効果ガス削減目標を2013年と比べ46%削減することを目標にしています。目標を達成するため、政府は電力共通比率を以下の通りにシフトしていくことを目指しています。

 

(住職の独り言 令和3年4月 温室効果ガス削減と原子力発電 参照)

【2013年の電力供給比率】      【2030年の電力供給比率】
火力 石炭    39%              29%
天然ガス     37%              27%
原子力       6%             20~22%
再生エネルギー  18%             22~24%

 

政府は原子力発電強化を目指しています。何かを守るためには、何かを諦めたり・我慢しなければならない…私達の置かれた状況はそんな感じだと思われます。それでも今回挙げた2つの出来事を考えると、私は原子力発電推進に対して反対の想いが強まりました。津波・地震等に対しては、今後の技術開発次第では十分な安心安全を得ることができるかもしれません。しかし自爆を前提にしたテロ行為には、どんな対策でも防ぐことは困難を極めると思います。テロ行為の対象が原子力発電になったら…原子力発電所があること自体が、自国に核爆弾を設置しているように思えてきました。現在のロシア侵略戦争による原子力発電所への攻撃ニュースを見ると、その不安な思いは一層深まります。日本も台湾有事から戦争に巻き込まれた場合、原子力発電所を守ることができるのかと…。

 

日本は世界で唯一原子爆弾を被爆した国、そして福島の原子力発電事故を経験した国です。この事実を忘れずに、また現在のウクライナ問題・地球温暖化問題なども考慮した上で、今後のエネルギー開発問題を再度見直すべきだと考えました。