お盆が近づくと、お寺は忙しくなります。棚経といって、檀家様の家に行き、お経を上げ、ご先祖様を迎え供養します。東陽寺は昔から総代様と今年初めてお盆を迎える新盆の方を対象に棚経を行っています。
私の従妹のお寺は千葉県富里にありますが、そのお寺は8月盆で約450軒・全檀家様を対象に棚経を行っています。そのため、お盆期間中では回りきれず、お盆の始まり1週間前から棚経を行っています。私もそちらのお寺のお手伝いで棚経をさせて頂いた経験があります。富里の檀家様は農家の方が多く、この時期は作物の作業が忙しい時期です。そのため棚経でお坊さんが来ることは分かっていても、正確な時間は分からないので、戸を開けっ放しの場合があり、留守中に私1人が家に上がり仏壇の前でお経を上げ、経机の上の御布施を頂いて帰るという経験もありました。
このことを考えると、東陽寺の棚経は比較的に楽であると感じるかもしれません。しかし、私にとっての棚経は30年前の苦い思い出が心に染みついています。当時、朝6時に車で出発し、20件近く檀家様宅を棚経で回ると、帰りは夕方6時過ぎになることがしばしばでした。なぜなら東陽寺は江戸時代浅草にあり、昭和3年足立区に移転したため、檀家様の住所は都内でバラバラの場合が多く、一日棚経を行うと東京都を一周することもありました。更に当時はカーナビ・携帯電話も無く、何丁目までしか記載されていない地図を片手に、最後の番地を探すのに1時間要したこともあります。近くにいるけれども檀家様宅が判らず、電話ボックスを探すのにも苦労しました。また駐車場探しで細い路地を何回も周ったり、更には路地で地図を見ていると、突然後ろの車からクラクションが鳴り、慌てて車を移動し電柱にぶつけた事が2度あることも鮮明に覚えています。今思えば、少し無茶をしたと反省しています。
今はカーナビも携帯電話も有り、少しお金はかかりますがタクシーで檀家様宅を回ることも出来きます。便利な世の中になった・安心して新住職に棚経に行ってもらえると思いながら、当時の思い出を書き出してみました。