萬年山 東陽寺

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住職のひとり言

奈良の事件に思うこと

安部元首相が撃たれ、亡くなられた事件。容疑者の母親が宗教法人に入り、1億円近い献金により家庭が破産・崩壊…その恨みが原因で起きた事件と報道されています。また最近の報道では、容疑者の辛い過去・母親の育児放棄・家族の自殺等が明るみに出てきました。本来、宗教者とはそういった家庭での問題や心の悩みに相談にのり、少しでも良い方向へ導いていく立場であるはずでしたが、今回はその真逆に思えます。同じ宗教者として恥ずかしい思いであり、同時に自分自身への戒めを強める思いを抱きました。

 

また今回の宗教団体の元信者による報道も出てきました。精神的に弱い人が段階的に洗脳され、そこにいることが心地よい状況を作り、抜け出せないように仕掛けられているそうです。教団から抜けたいと思っても、新しい世界で自分の居場所を作ることは非常に難しく、世間の目も厳しいそうです。そのため一旦教団から脱退しても、また戻るケースが多いことも報道されていました。教団から自立し、新しい世界で自分の地位を確保するまでには、本人の意思だけでは足りず、家族の力や社会的な心の相談窓口等のケアーが必要だと感じました。また元信者が今回の事件に対して、殺人行為は認められないが自分も同じことをしたかもしれないと言うところに、今回の事件・教団の恐ろしさを感じました。

 

最後に、容疑者をどうにか救えなかったかと考えてみました。容疑者は周到な計画を考えることができる人物です。そんな頭脳を持つ人物が大衆の前で今回の事件を強行…通常の人では考えられないような精神状態だったと推測できます。また容疑者は20歳頃に自殺未遂をしているそうです。今回の事件の報道を色々と聞いて、改めて人の心は決して強いものではない、周りの環境によって大きく影響されると感じました。全てを周りのせいにする考え方は誤りですが、自分一人ではどうにも解決できない問題があることも事実です。そういった一人では解決できない問題に手を差し伸べる存在が宗教であることを再度認識し、今回の容疑者のような方を一人でも救えるように活動していきたいと思いました。